▲校内を流れる水路の清掃に取り組む生徒たち。農業系学科のある南稜高校にとって、
水は欠かすことのできない存在(写真=南稜高校提供) |
「水の宣言校」は、「熊本の水を若い力で守ろう」と、県や熊本市、公益財団法人くまもと地下水財団などでつくる水の国高校生フォーラム実行委員会が呼び掛けた水環境保全活動の一環。昨年10月に行われた同フォーラムでは、県内第1号となった南稜高校のほか、菊池高校と済々黌高校が、それぞれの活動内容を発表しました。 |
工夫を凝らした再利用などで節水を実践
球磨郡あさぎり町にある南稜高校は、普通科のほか生産科学科、園芸科学科、食品科学科など、農業系の学科が多く(2017年4月には、新設の南稜高校が学科を変更して開校)、農作物の栽培や畜産の実習などで、たくさんの水を使用しています。そのため、校内には球磨川の水を利用した地域のかんがい用水「百太郎溝」から引いた、手作りの水路が張り巡らされています。
そうした水との深い関わりを持つ同校の生徒会と農業クラブ、家庭クラブが中心となり、クラス討論会や全校集会などを経て宣言文がまとめられました。その中で、「ボランティアによる水路清掃などの美化活動の促進」「常時節水、雨水や使用後の水の再利用」「ポスター掲示などによる校内への啓発」という3つの活動方針を掲げ、実践を続けています。
現在、生徒会長を務める藤本翔さん(3年)は、「(先輩たちが行った)宣言第1号を誇らしく思います。それをきっかけに私も水の大切さを意識するようになりましたし、先輩方が築いた校内の水路をあらためて貴重なものだと感じました」と話します。
3つの活動方針の一つ、「雨水や使用後の水の再利用」に取り組んでいるのは、農業クラブ。校内3カ所に手作りの簡易浄化槽を設置し、掃除で使ったバケツの水などをそこに流すように呼び掛けています。「浄化槽に汚水を入れると布、石、砂の3段階でろ過され、そのまま花壇に流れる仕組みになっています」(農業クラブ会長・倉本蓮真さん〈3年〉)。
こうした活動のほか、同校では「宣言」以前から、校内を流れる水路を使って農作業で汚れた長靴や農機具を洗うようにしています。また、水路の水を引いている地域の農業遺産・幸野溝と百太郎溝の水路、全長約14kmを歩いて地域と水の関わりの歴史を学ぶなど、学校を挙げて節水や水環境保全活動に取り組んできました。
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▲広い校内に縦横に張り巡らされた水路 |
生徒へのアンケートでも意識の高まりが顕著
校内での活動を通じて、徐々に生徒たちの「水」に対する意識が向上したことは、同校で行った節電や節水に関する意識調査にも表れています。
「水の宣言校・第1号になったことで、より水を大切にしようと思ったか」との質問に、昨年度の1年生が15・2%だったのに対し、2年生になった今年度は96・2%となっています。同じく昨年度の2年生は37・7%だったのが、3年生になり69・4%と、いずれも学年が上がるごとに前年より意識が高くなっていることが分かります。
こうした意識の高まりは、家庭での節水の取り組みにも好影響を与えているようです。生徒の意識調査に関わった家庭クラブ会長の石田晴香さん(3年)は、「父がハミガキのときに水を出しっぱなしにしているのを見て、思わず蛇口を閉めたりします(笑)」。また、藤本さんも「シャワーを使うときは、頭、体、顔を一度に(シャンプーや石けんで)洗い、流すのが一回で済むようにしています」と、自身の節水エピソードを話します。 |