提唱】熊本日日新聞社 【特別協力】熊本県、熊本市、環境省九州地方環境事務所、国土交通省熊本河川国道事務所
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最終更新 2012/08/29

  


 河川や海などの水環境を守るには、水を汚さない工夫や心掛けが大切ですが、社会生活を営む中で、家庭の生活排水や、工業、農業などの産業排水が出るのは避けられない部分でもあります。私たちは日々の暮らしで多くの水を必要とし、使った後の汚れた水を気にすることはほとんどありません。では、最近の水環境はどうなっているのでしょうか。一般家庭に最も身近な水辺の一つである河川の水質について考えてみました。




生活排水による
    汚染は減少


 河川などの水質は、汚染の程度を示す代表的な指標である生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)を測定して調べます。
 国土交通省熊本河川国道事務所は毎年、白川と緑川の中下流域でBODの年間平均値を調査。昨年は白川が1リットル当たり0.8ミリグラム、緑川が同1.1ミリグラムと、いずれも「ヤマメやイワナが生息できる水質」とされる、1リットル当たり2ミリグラム以下の良好な数値でした(グラフ参照)。近年は下水道整備や生活排水対策の効果で、家庭などの汚水が直接、川を汚すケースはかなり少なくなっているようです。

写真
「しらかわの日」の水質調査でも、白川は「きれいな川」という結果が得られました
=8月5日、メーン会場となった熊本市中央区本山の白川河川敷




薬品や家畜飼料が
    水質に影響も


 一方で新たな不安材料も。熊本大学大学院自然科学研究科の川越(かわごし)保徳教授によると、人が摂取した薬品や家畜飼料などに含まれる抗生物質は体外に排せつされた後、汚水処理設備で十分に分解されないまま川などに排出されることがあります。そのため、水の中に生息する生物への影響が心配されるそうです。また「農業や園芸に使う肥料に含まれる窒素やリンが過剰に河川や海に流れると、アオコや赤潮発生の原因になりかねない」とも。 同教授は「人間はほかの生物とのバランスの中で生きている一員でしかない。これからはそんな意識を持ちつつ、自然と接していくことが必要でしょう」と話しています。
図



Report 2012.8.5 第9回「しらかわの日」 身近な川だからこそいつまでもきれいに

 美しい水環境を守るためには、身近な水辺に接する機会を増やすなどして愛着を深めることも大切です。清掃活動や自然観察などを通して川に親しむイベント「しらかわの日」が8月5日、熊本市や阿蘇市などの白川流域で開かれました。真夏の日差しが降り注ぐ中、多くのボランティアが活動に汗を流しました。





 同イベントは流域の市民グループなどでつくる「白川流域リバーネットワーク」(金子好雄代表)が毎年開いており、9回目。今年は全14会場に、約1800人が参加しました(7会場は7月に実施)。
 メーン会場となった熊本市中央区本山の白川河川敷では、7月の豪雨災害で川岸の至る所に積もった土砂が強風にあおられる中での作業に。目に付く流木が被害の大きさを物語っていました。約1時間で流木や空き缶など軽トラック4台分のごみを回収しました。
 清掃の後、参加者は流域のわき水を飲み比べて水源を当てる「利き水」や水質調査も体験。意外な発見もあり、楽しいひと時を過ごしました。



メーンの本山会場で清掃活動を行う参加者たち


 水質調査は、東海大学「白川エコロジカル・ネットワーク」のメンバーの指導で、水中の有機物の汚れを調べるCODのパックテストなどを行いました。その結果、白川の水は水道水と大差なく、きれいだということが判明。 子どもたちは驚きの声を上げていました。しかし、白川の水にジュースを一滴たらすと、たちまち汚染度がアップ。身近な川だからこそ、汚してはいけないという思いを強くしていたようです。



ごみ拾いの後は白川の水質調査も体験しました





活動に参加してー


写真 永目 竜治さん(39)、熊本市・公務員
 子どもの陸上クラブの練習コースが、この河川敷なんですが、水質がきれいという調査結果には驚きました。住民同士が声を掛け合い、地域で川を守る活動が盛り上がればいいですね。

写真 中村 拓海さん(14)、熊本市・中3
 総合学習で「環境コース」を取っているので参加しました。白川は汚いイメージでしたが、実際は、かなりきれいなんですね。どんな生物がすんでいるかも調べてみたくなりました。

写真 島村 寧音(ねお)さん(12)、熊本市・小6
 実験してみて、少しのことで水は汚れるんだと分かりました。白川をこれからも大切にしていきたいですね。源流水の利き水は、水をくんだ場所によって味に違いがあり、面白い体験でした。



 第1回親子環境探検隊
 江津湖で水生生物ウオッチング

日時 9月30日(日) 9時半~正午
場所 熊本市の上江津湖
内容  江津湖にすむサワガニやヨコエビ、カゲロウの幼虫の観察などを通じ、身の回りの水環境を考えます。親子20組募集(先着順)。参加無料。申込方法など詳しくは下記へ

 主催・問い合わせ
 熊本市環境総合センター TEL096(379)2511



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エコモーションPickup【2】
家庭でできる排水対策
油類は極力流さないで

 海や川が汚れる原因には一般家庭からの生活排水も影響しています。主婦で元熊本市節水推進パートナーシップ会議副委員長の大住和估さん(64)=同市=に、台所を中心に、家庭でできる生活排水対策のポイントを聞きました。
 「流しには、油類は極力流さないよう努めてください。油が排水管に付着して詰まりの原因になり、処理場で処理する時にも厄介です」と大住さん。「食器に付いた油汚れは、古着などを切っておいたもので、あらかじめ拭いておけば、汚れた水が流れるのを最小限に防げます」とアドバイスします。大住さんは洗剤も泡切れがよく、環境に優しいものを使用。食器類をすすいだ水はバケツなどに取り、庭木の水やりや打ち水のほか、トイレの流し水や洗面所などの掃除に再利用するそうです。
 「水の捨て方を考えることは節水にもつながります」と大住さん。「循環する水の大切さを知るきっかけにしてもらえれば」と話しています。



しのはらセンセイのECOラム【2】
生活排水と環境汚染
捨てた水の“行き先”知ろう

 私の手元に、環境教育の場で使われている生活排水に関する表があります。タイトルは「台所の流しは海の入り口」。この表の意味するところを考えてみたいと思います。生活排水の行き先としては、そのまま川や海へ流す、し尿だけを処理する単独浄化槽(台所や洗濯排水はそのまま川や海へ)、合併浄化槽、農業集落排水処理施設および公共下水道施設の5通りあります。2010年度、県内で合併浄化槽、農業集落排水処理施設、公共下水道施設で浄化されている人口割合は80%でした。つまり20%の排水は、未処理のまま川や海に流されているのです。 「台所の流しが海の入り口」となっているのは、この20%を意味しています。みそ汁やラーメンのスープなどは、処理施設を通せば微生物で浄化されるので捨てることができますが、どんな場合も、流しに捨ててはいけないのが油です。微生物は油を容易に分解できず、排水の中でできた廃油の塊は浄化槽や下水道の施設を傷めます。自分たちが捨てた水の行き先を正しく知っていないと川や海は守れません。

くまもとエコモーションキャンペーン 総合コーディネーター
熊本県立大学環境共生学部教授 篠原亮太さん


◇しのはら・りょうた 1973年、北九州市環境衛生研究所入職。99年から現職。
「くまもとエコモーションキャンペーン」総合コーディネーター。福岡県出身。



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