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最終更新 2012/09/28




 森林や草原は、美しい景観として私たちを楽しませてくれるだけでなく、二酸化炭素(CO2)を吸収して温暖化を抑制したり、生態系を維持していく場になったりと、環境保全の面でも重要な役割を担っています。緑の効能はさまざまですが、健全な形で維持していくには適切な管理も重要。緑と上手に付き合うことができれば、私たちの社会や日々の生活はもっと豊かに潤うでしょう。




温暖化緩和などの機能も

 最も広範囲な緑地といえば、森林が挙げられるのではないでしょうか。森林の機能はさまざまです。生物多様性の保全や地球温暖化の緩和、大気の浄化、土砂災害防止・土壌保全、水源かん養…。このほか、木材やキノコなどの供給や、自然観察などレクリエーションの場としても役立っています。
 「ただし、これらは相互に結び付いた機能で、一つ一つに過度の効果を期待するのは禁物」と話すのは、独立行政法人森林総合研究所九州支所(熊本市中央区)の吉永秀一郎産学官連携推進調整監(55)。土地の特徴と植生とのバランスが取れなければ、木の生育が悪くなり、効果も低減するとのことです。

図


維持管理に“人の手”が

 吉永さんは「人の手をまったくかけないのが良いというわけではありません」とも。例えば、人が植えた森を健全に保つには、木々に適度な間隔を持たせる間伐などの作業が不可欠。また都市公園の緑は、レクリエーションの用途しかないと思われがちですが、実は、鳥獣のコリドー(回廊)にもなっているそうです。「緑の効用や機能を良好に維持するには、手入れが必要になる場合もあるということを知ってほしい。そのためには木や森に触れ、身近に感じることが一番」と吉永さんは言います。
 熊本には、自然に親しむイベントや行事が数多くあります。まずは身近な緑に接することから始めてみてはいかがでしょう。






 森林の働きや緑の大切さを知ってもらおうと、県内各地でガイドツアーなどが開かれています。熊本市北区の立田山で定期的に実施されている「立田山憩の森 定期森林ガイド」もその一つ。県森林インストラクター会のメンバーの案内で森林の働きや動植物の生態などのフィールド学習を行います。9月9日、同行取材しました。


  
    森林インストラクターの説明を聞く参加者たち


 






 午前9時半、33人の参加者が3班に分かれて散策を開始。この日のテーマは「早秋の野草散策」。動植物の写真入り資料を手に、実物と照合しながら観察していきました。
 インストラクターが指差す先にはさまざまな動植物が次々と出現。スダジイ、クヌギ、コナラなどのドングリや、コムラサキ、ウリクサ、ツユクサなどの草木、クモに似たザトウムシ、トカゲの仲間・カナヘビなどの生き物にも出合いました。写真と同じものが見つかるたびにあちこちで歓声が上がり、インストラクターの楽しい解説が始まります。「枝付きで落ちたドングリの枝がスパッと切れているのは、チョッキリと呼ばれるゾウムシの仕業なんですよ」
 確認できた植物だけでも20種類以上。五感をフルに使ってアウトドアを満喫した、爽快な2時間半でした。
 ガイドは毎月、2コースが交互に行われ、リピーターが多いのが特徴です。インストラクター会ではこの他、県内各地で森林自然観察・体験教室を開き、参加者を増やしています。参加した男性は「来るたびに自然や緑を大切にしようという意識が強まります」と話していました。



さまざまな年齢層の人たちが森林の散策を楽しみました



僕もドングリ拾ったよ♪






活動に参加してー


写真 今村 孝憲さん(72)、熊本市・無職
 普段はウオーキングを楽しんでいますが、山歩きにも興味があり参加しました。植物学習ついでの散策が面白く、立田山が地域のオアシスであることも再認識しています。県内各地の山も訪れたいですね。

写真 花田 喜美枝さん(34)、熊本市・福祉施設勤務
 4歳の息子が一緒に歩けるか心配でしたが、初めての山遊びに大満足の様子でした。驚いたのは子どもの目線。思いもよらないものを見つけてくるんですね。今後も機会を見つけて参加したいと思います。

写真 品川 大亮君(10)、熊本市・小4
 立田山はお祭り広場のアスレチックにはよく来ますが、インストラクターの人と山の中を歩くのも、すごく楽しかった。クヌギとコナラは知ってたけど、初めて見る花やキノコも多かった。これからも、もっと遊びに来たくなりました。



立田山憩の森 定期森林ガイド

日時 10月14日(日) 9時半~正午
場所 熊本市「立田山憩の森」Cコース
内容 県森林インストラクターの案内で立田山憩の森を散策、森林の働きや動植物の生態などを学びます。定員20人程度(申込不要)。参加無料。山歩きに適した服装で、雨具、水筒など持参

 主催・問い合わせ
 県森林整備課みどり推進室 TEL096(333)2441



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エコモーションPickup【3】
屋上・壁面緑化
まちに緑豊かな空間を創出

 建物の屋上や壁面などに植物を植え、緑豊かな空間を創り出す建物緑化の取り組みに注目が集まっています。景観向上だけでなく、都市部の気温が上昇するヒートアイランドの緩和も期待されます。
 屋上緑化に本格的に取り組む場合、植える土壌や排水、建物への荷重負担などに考慮しなければなりませんが、「最近は、人工軽量土壌や水はけを良くする特殊マットなども開発されています」と、外構工事などを手掛けるアウテリアタイガー(熊本市中央区)。費用面などから現状、一般家庭では少し敷居が高いようですが、関心は高まっているといいます。
 一方、壁面緑化の一環として市販のフェンスを設置して、つる性の植物を這わせる方法は「費用も手ごろで管理もしやすい」と同社。「ヘデラ類など常緑のつる性植物なら、これからの季節も楽しめます」
 こうした緑化の取り組みを促そうと熊本市では、中心市街地活性化基本計画区域内(415ヘクタール)で屋上やベランダ・壁面を対象に、緑化の工事費の一部を補助しています。同市緑保全課 TEL096(328)2352。

木製フェンスを利用した壁面緑化の一例(アウテリアタイガー提供)

しのはらセンセイのECOラム【3】
大切な森を守る活動
欠かせない間伐や枝打ち

 森林には、炭酸ガスを酸素に変えたり、地下水をつくり出したり、さまざまな環境保全機能があります。山に降った雨は、森林がなければ、一気に河川に流れ込んで洪水を起こし、地下への水の浸透も減少します。熊本地域(熊本市と周辺10市町村)の地下水を増やそうと、植林活動が盛んに行われています。森林が地下水を生み出す仕組みとして、降った雨水の25%は地表を流れ、25%が直接蒸発、15%が吸収された植物の葉から蒸散し、残りの35%が地下へ浸透していくそうです。一般に森の土壌表面には落葉や枯れ草などの腐植物(堆積腐植層)があります。この層があることで地表面からの水の蒸発を抑え、土壌の流出を防いで、地下水がつくられます。森が豊かになれば、堆積腐植層が形成されますが、これを維持するには森林の中に適度な光を入れる必要があります。昔から、価値ある木材を生産するために行われてきた間伐や枝打ちは、森林土壌を健全な状態に保つのに大変役立っていました。植林はもちろん、森林の整備も大切な作業なのです。

くまもとエコモーションキャンペーン 総合コーディネーター
熊本県立大学環境共生学部教授 篠原亮太さん


◇しのはら・りょうた 1973年、北九州市環境衛生研究所入職。99年から現職。
「くまもとエコモーションキャンペーン」総合コーディネーター。福岡県出身。



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