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最終更新 2012/07/26






 熊本県は、県全体の水道水源の約80%、熊本地域(熊本市とその周辺10市町村)に至ってはほぼ100%を地下水で賄うなど、全国有数の豊富な地下水を誇っています。しかし、限りある資源であることに変わりはありません。近年の地下水調査を見ても、熊本地域の台地部を中心に水位の低下が進んでいます。将来にわたって県民共有の財産を守っていくために、県民や企業、行政などが一体となった行動が求められています。




都市化などで
 熊本地域の地面の下には豊富な地下水を蓄える大きな“水がめ”があり、阿蘇外輪山の西のふもとの台地部から熊本平野へと広がっています。水位の低下が目立つのは台地の部分。菊陽町辛川の観測井戸を例に取ると、1982年に28・27メートルだったのが、2011年は23・84メートル。約30年で4メートル以上も低下しています(県調べ)。江津湖の湧水量を見ると、92年に1日当たり49万立方メートル湧き出していたのが、10年には41万立方メートルに減っています(東海大産業工学部調べ)。
 原因は水の使い過ぎと思われがちですが、使用量は年々減少しているのです。それなのに地下水位は低下し湧水量は減るばかり。県環境立県推進課では、都市化や減反が大きく関わっていると指摘します。市街地の拡大などでアスファルトに覆われた地面が増え、また、減反が進み水田作付面積が減少した結果、かん養域の面積が大幅に減っているそうです。

 

菊陽町と大津町の白川中流域では休耕田への水張りなど地下水かん養の取り組みが積極的に行われています(県環境立県推進課提供)







 熊本地域では、周辺自治体や企業を中心に、白川中流域など地下水かん養域での水田の水張りや、水源となる森林・草地の維持・保全活動、雨水浸透ますによる住宅地等でのかん養を進めるなど、水がめを整備する努力を続けています。
 貴重な水資源を守っていくためには私たち一人一人が節水に努め、水を大切にすることはもちろん、長期的に見れば、地下水の入り口を保全し、地下水量を安定的に保つことが急務といえそうです。そのためのボランティア活動も盛んに行われています。









【Report 2012.7.8】

地下水のかん養

まずは森の手入れから


熊本市「水源の森づくり」ボランティア育成講座


 地下水のかん養はまず、水源の森づくりからー。熊本地域で湧き出す地下水は森林や草原に降り注いだ雨が地下に浸透し、長い年月を経て育まれます。そうした森の機能を維持しようと、企業やボランティアなどによるさまざまな保全活動が行われています。大津町真木の山林で7月8日に行われた水源かん養林の下草刈り活動を取材しました。



 下草刈りは、熊本市が森林保全活動の活性化を図ろうと2001年度から実施している「水源の森づくり」ボランティア育成講座の一環。この日は会員約40人が、5年前に植えられたヤマグリやヤマモミジなどの水源かん養林(約34ヘクタール)の一部で作業を行いました。下草刈りは木々が健全に育つために重要な作業の一つで、苗木の植え付けから6年間は必要といわれています。
 菊池森林組合の職員の指導の下、参加者は柄の長い鎌を使い、背丈の半分以上もある草むらを刈り進んでいきました。最初は草に埋もれてよく見えなかった苗木も、徐々に姿を現し、1時間半ほどで作業は終了。終始、和気あいあいとした雰囲気でした。



約40人の会員が参加した水源かん養林の下草刈り作業の様子=大津町



 今回集まったのは熊本市に居住するなどしている20代~70代後半の人たち。初参加の人もいれば、キャリア10年以上のベテランもいましたが、自然が好きなことと古里の水資源に対する愛着や危機意識は、全員に共通する思いのように感じられました。
 活動は年4回開かれ、2回目の下草刈り(9月)の後は、間伐・枝打ち(11月)、苗木の植え付け(来年3月)の各作業が予定されています。
 主催する同市水保全課では常時会員を募集。「地下水の保全に何らかの形で貢献したいという方はぜひ参加してみませんか」。詳しくは同課【TEL】096(328)2436。






【活動に参加してー】

「元気に、楽しく」が一番
権頭 龍雄さん(79)、熊本市・無職
 水と森が好きで第1回目から参加しています。自分でも7年前に「水源の森ボランティアネットワーク」を立ち上げました。ボランティアは安全第一で、元気に楽しくやるのが一番です。

熊本の水の貴重さを実感
二宮 知香さん(20)、熊本市・大学生
 今回、初めて参加しました。大学で生物生命学を学んでいて、環境保全には興味があります。県外に出ると熊本の水の貴重さを実感するので、このような取り組みは大切だと思います。

森づくりに一役買いたい
上村 公治さん(60)、熊本市・会社員
 阿蘇火山博物館でインタープリター(解説者)として子どもたちに森と水がつながっている話をするので、森づくりに一役買おうと参加するようになりました。体力のある限り、続けます。



体験してみませんか? 森で使う手工具の取扱研修
日時 8月19日(日)9時半~15時半
場所 県林業研究指導所(熊本市中央区黒髪)
内容
森と人との関係を学び、木を切るのこぎりの目立てや下草を刈る鎌の研ぎ方、下草刈りを体験します。初心者も歓迎。定員20人。参加無料


主催・問い合わせ (公社)熊本県緑化推進委員会 【TEL】096(387)6260



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エコモーションPickup【1】
大切な節水の意識
熊本市で男性向けの“教室”も

 地下水を守るためには、水源かん養の努力とともに、私たち一人一人が、水の無駄遣いをやめるという意識を持って行動することが大切です。水使用量が最も増える7、8月を「夏季の節水重点期間」と位置付け、1人1日当たりの生活用水使用量を230リットルにすることを目標に掲げる熊本市は、「水道の蛇口の小まめな開閉などちょっとした取り組みの積み重ねが大切。普段から意識を高めてほしい」と呼び掛けています。
 同市では、女性中心になりがちな節水活動を男性にも学んでもらおうと、「男の節水教室」を開催します。歯磨きや洗顔、食器洗いなどさまざまな水使用の場面での節水方法を講話形式でレクチャーするほか、水道使用量の検針票の見方なども紹介。「特に“節水初心者”の方の参加をお待ちしています」と同市水保全課。
 同教室は、25日の西区を皮切りに各区で開かれます(日程・会場は下表参照)。参加無料。定員は各20人で、申し込み先着順。人数に余裕がある場合は当日参加も可。詳しくは同課【TEL】096(328)2436


■「男の節水教室」開催スケジュール
  開催日  会場 
西区  7//25(水) 西武公民館会議室C 
南区 8/1(水) 富合公民館研修室1 
北区  8/7(火) 植木公民館視聴覚室 
中央区   8/21(火)  中央公民館5F-1
東区  8/29(水) 東部公民館A研修室 
 



しのはらセンセイのECOラム【1】
地下水保全条例の改正
「みんなで守る」メッセージに

 先日、ある会合で廃棄物処分場の話が出ました。私は、「地下水と密接な関係にある白川中流域に処分場を造ることは避けたいが、どうしても造らなければならないなら、容量をできる限り小さくして、屋根付きの密閉型処分場にしたほうがいい」と発言しました。すると県外から参加した専門委員が「処分場の底には技術的に保証された防水シートを敷き、漏水検知器を設置するので建設には問題はない」と回答されました。技術的な問題はないかもしれませんが、熊本に赴任して14年、地下水のありがたさを体感してきた私は、この発言に納得がいきませんでした。熊本地域の飲料水はすべて地下水で賄われています。100年先も地下水を使い続けていくために、熊本市は2008年、県はことし、地下水保全の条例を改正しました。いずれも、地下水を「公共の水」として取り扱い、地下水のかん養と節水を推進することが盛り込まれています。使用規制だけではなく、「地下水をみんなで守り続けます」という強いメッセージが含まれているのです。

くまもとエコモーションキャンペーン 総合コーディネーター
熊本県立大学環境共生学部教授 篠原亮太さん


◇しのはら・りょうた 1973年、北九州市環境衛生研究所入職。99年から現職。
「くまもとエコモーションキャンペーン」総合コーディネーター。福岡県出身。



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