提唱】熊本日日新聞社 【特別協力】熊本県、熊本市、環境省九州地方環境事務所、国土交通省熊本河川国道事務所
くまもとエコモーションキャンペーン 2010身近なエコからはじめよう! くらしの中でできるECOは何?
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最終更新 2012/10/30


 東日本大震災に伴う原子力発電所の事故以来、原子力に代わるエネルギーとして、太陽光や風力など自然の力を利用する再生可能エネルギーの普及に期待が高まっています。これらは二酸化炭素(CO2)排出などの環境負荷が少なく、エネルギー供給の持続性も備えています。普及に向けた取り組みが各地で始まっており、県内でも日常生活や産業活動などのさまざまな場面で導入が進んでいます。

 再生可能エネルギーの普及拡大を目指し、7月には再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まりました。企業や個人などが太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスで発電した電気を、電力会社などに一定期間・価格で買い取らせるもので、実用化の道がさらに広がりそうです。
 熊本県は再生可能エネルギーの導入に力を入れており、住宅用太陽光発電システムの県内普及率は5・63%※(2010年度)と、佐賀県の5・99%に次いで全国2位です。豊かな自然環境に恵まれた地域特性から、小水力や木質・畜産系バイオマスなどのエネルギーの供給にも適しており、既に導入例もあります(下の表参照)。太陽光や風力は電力供給が天候や気候に左右されやすい難点がありますが、小水力、バイオマスは安定的に供給できるのが強みとされます。
 再生可能エネルギーが普及して石油など化石燃料の使用が少なくなれば、地球温暖化の抑制にもつながるでしょう。また熊本大学大学院自然科学研究科の鳥居修一教授(52)は「小水力や木質バイオマスの実用化が進めば過疎地域が経済的に潤い、地域の活性化も期待できます」と話します。
 今年から熊本、福岡、佐賀、鹿児島の4県で太陽光、風力、小水力、木質バイオマス導入の可能性を調べる事業も始まりました。県単位で発電に適した場所と発電可能量の地図を作り、最終的には各地の施設を情報技術(IT)でつなぐ次世代送電網「スマートグリッド」で電気を効率利用する構想ですが、遠い未来の話ではなさそうです。
※県エネルギー政策課まとめ。普及率は国の補助制度申請件数を一戸建て住宅総数で割って算出
 


代表的な再生可能エネルギー
 エネルギーの種類 発電方法  主なメリットや課題  県愛の導入例・出力量など
   太陽電池利用のソーラーパネルに太陽光を当て、電力に変換 設置地域に制限がなく工期が短く済むため、導入しやすい
機器の維持管理がしやすい
気候条件に左右され、夜間は稼働しない
 2010年度末時点の累計導入件数は、住宅用が2万4845件(10万9026kW)、工場や事務所など非住宅用は463件(1万7409kW)
※県エネルギー政策課まとめ
  風車でタービンを回し、発電
比較的発電コストが低く、変換効率が良い
風があれば夜間も発電可能
阿蘇にしはらウィンドファーム(西原村、出力1万7500kW)など8施設、計3万750kW
※2009年9月、県環境政策課まとめ
 (小型の風力発電機は除く)
  木のくずや家畜の排せつ物など生物由来の資源を燃料化し、発電に用いる 廃棄物の再利用などで資源循環型の社会づくりに貢献
農山漁村の資源利活用で地域の活性化も
資源の収集・運搬・管理にコストがかかる
8施設あり、発電総出力は4865kW(燃料は木質系バイオマス、畜産系バイオガス、食品系バイオガスなど)、バイオディーゼル燃料(BDF)は12事業者が製造し、年間製造量は466kl
※2009年9月、県環境政策課まとめ
  水路に設置した水車を回し、発電 河川や用水路などの流れを有効活用できる
河川などの水を発電に使う権利(水利権)の取得が必要
44施設あり、発電総出力は25万404
8kW(2009年度末時点)。管理者は県企業局、国土交通省、山都町、チッソ(JNC)、旭化成、九州電力、電源開発
※各管理者への照会結果に基づき、建設技術研究所が作成
  地熱の蒸気でタービンを回し、発電 発電に使った蒸気・熱水を再利用できる
持続可能で長期間、昼夜を問わず安定供給できる
 
なし
※このほか太陽熱、潮力、波力などの発電方法がある







ソーラーパワーのすござ実感 エコ祭り

 私たちの暮らしに最も身近な再生可能エネルギーの太陽光発電。熊本県は産業用のメガソーラー(大規模太陽光発電施設)でも先端を走ります。それを象徴する施設が、長洲町にある国内最大級のメガソーラー「リクシル有明ソーラーパワー」。10月14日、同施設内で環境イベント「エコ祭り」(同町、LIXIL主催)が開かれました。
たくさんの人が訪れた
「エコ祭り」の会場=長洲町


 同イベントは、地域住民に環境への理解と再生可能エネルギーの普及啓発を促すことを目的に開催。子どもからお年寄りまで多数の人たちが訪れ、クイズに参加したり、パネル展示を見たり、思い思いにブースを楽しみました。
 中でも人気を集めたのが、県のPRキャラクター「くまモン」も参加して行われたクイズ大会。同施設や環境に関する問題に〇×式で答え、子どもたちはくまモンとの楽しい掛け合いに大喜びでした。
 ツアー形式によるソーラーパワーの見学会も行われました。昨年1月に完成した「有明ソーラーパワー」は面積が11万9000平方メートルで、東京ドーム2・5個分の広さに相当。2万280枚のソーラーパネルで敷き詰められたモジュールは3・75メガワットの出力を持ち、発電した電気は自社工場で使用されます。ツアーの参加者はこうした説明を受けながら、モニターにリアルタイムで映し出される稼働状況を確認しました。
 この後、参加者は屋外の展望台からソーラーパネルの壮観な眺めを体験し、最後にパネルに触れて実際に稼働していることを実感。「設備の寿命は何年ですか?」「保険はききますか?」などと熱心に質問し、太陽光発電に対する関心の高さをうかがわせていました。

クイズや施設見学などを通じて楽しく学びました=いずれもイベントの一コマ



イベントに参加してー


写真 今村 孝憲さん(72)、熊本市・無職
岩井 七海さん(9) 長洲町・小3
 太陽の光をそのまま使っているのはエコだからいいと思うけど、電気ができるのが不思議です。サマースクールでパネルを見学したことはありましたが、動いているものに触ったのは初めて。温かかったです。

写真
藤山(とうやま) 美穂さん(31) 玉名市・病院事務職
 省エネタイプの家電をそろえているせいか、普段はテレビなど付けっ放しにしがちです。会場で、電気をどれだけ使っているかが常に表示される仕組みを見て、ちょっと考えを改めたいと思いました。

写真
友成 信一郎さん(34) 玉名市・会社員
 普段から節電を心掛けていますが、再生可能エネルギーを強く意識するようになったのは昨年の「3・11」がきっかけでした。一番身近に感じるのはソーラーシステム。家を建てるなら取り入れたいですね。



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エコモーションPickup【4】
メガソーラー
出力1メガワット以上の太陽光発電所
 地球温暖化問題や、東日本大震災による電力不足問題などを背景に、太陽光エネルギーを最大限に活用したメガソーラー事業に注目が集まっています。
 メガソーラーは、太陽電池パネルを土地や建物の屋根などに敷き詰め、出力1メガワット以上を発電する大規模太陽光発電所です。遊休地を有効利用して設置でき、売電収入や環境貢献などのメリットが見込めることから、事業に参入する企業が増加。全国各地で発電設備の建設が相次いでいます。
 熊本県は、日照条件が良い、土地が豊富などの理由から、全国でもメガソーラーの導入が進んでいる県の一つです。県エネルギー政策課によると、10月末現在、県内14カ所に設置が決定。このうち、リクシル有明ソーラーパワー(長洲町、11万9000平方メートル、出力3.75メガワットや南関セキア発電所(南関町、6万1100平方メートル、出力3.3メガワットなど4カ所のメガソーラーが実際に稼働しており、一般公開も行われています。

九州ソーラーファーム2南関セキア発電所=南関町(県エネルギー政策課提供)


しのはらセンセイのECOラム【4】
将来のエネルギー問題
期待大きい風力、太陽光
 石油などの化石燃料が枯渇し、近い将来、人類はエネルギー問題に直面すると危惧されてきました。しかし、昨年3月11日に発生した大地震、大津波、原発事故の連鎖は、国民の生命線であるエネルギー問題の速やかな見直しを迫っています。ここで注目されてきたのが、風力、太陽光、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーの導入です。特に電力を効率よく取り出せる風力発電と太陽光発電の役割は極めて大きいと考えられます。世界の風力発電市場は毎年20%以上、太陽光発電市場は40%以上拡大する急成長を遂げています。環境省の国内詳細調査(2010年度)によると、太陽光(非住宅系)で約1億7千万㌔㍗、風力では洋上を含め約18.7億㌔㍗の発電能力が見込めるそうです。ただ、発電用地として耕作放棄地などが含まれているため、これらの発電の普及には用地利用に関わる規制緩和が必要とされます。また、さまざまな方法で発電されたエコ電力が私たちに効率よく還元されるためには、発電部門と送電部門の経営分離が不可欠といえそうです。

くまもとエコモーションキャンペーン 総合コーディネーター
熊本県立大学環境共生学部教授 篠原亮太さん


◇しのはら・りょうた 1973年、北九州市環境衛生研究所入職。99年から現職。
「くまもとエコモーションキャンペーン」総合コーディネーター。福岡県出身。



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